日に日に陽気が暖かくなり、過ごしやすくなる一方で、春先になるとどうも調子が上がらない…。なんとなくモヤモヤとしているけれど、病気というほどではなく、スッキリできない…。

そんな春先の症状を、東洋医学をベースにした季節の食養生&ヨガで解消しよう!という連載体験企画が、C’s Kithen(シーズキッチン)・食養生×ヨガのスペシャルセミナー。

前回に引き続き、80C(ハオチー)では、営養薬膳大師・古月オーナーシェフの山中一男先生と、HAS YOGA髙橋ちひろ先生の知恵がたっぷり詰まった、食養生講座+レシピ+今すぐできるヨガポーズの三本立てでお届けします。

【食養生×ヨガ】東洋の叡智で身体をキレイに!春編

講義1:春の不調は肝がキモ!肝をケアして気分晴れ晴れ 料理2:山中一男先生の春の食養生5つのレシピ ヨガ3:鬱と肩こりを吹き飛ばす、気の巡りをよくするヨガ

 


春の不調は肝から。
経絡でつながった意外な部分からもSOSが…!

木々が芽吹き、風が薫り、ちょっと大きめの制服に身を包んだ新入生の姿が溢れ、すべてが眩しい春。その一方で、春は季節の変わり目でもあり、心身の不調を感じる人も少なくありません。

例えば目の疲れ、イライラ感、悶々とした気分、不眠、のぼせやすい、いつもよりストレスを感じやすい…。どうでしょう?心当たりはありませんか?

実はこれらすべては春特有の心身変化。東洋医学のベースになる五行思想では、各季節にはそれぞれその時期特有の感情があると考えますが、春は「怒」の季節でもあります。

ストレス

では、いったい何が「怒」に影響を与えているのでしょう? その答えは、季節の変わり目に敏感な肝(かん)。「春はイライラしたり、ストレスを感じたり、気の病と呼ばれるものが少なくありません。内臓とこうした感情が関係していると考えるのが、東洋医学の面白いところですね」と山中先生。

ちなみに肝=肝臓と思いがちですが、それは西洋医学の発想。東洋医学では肝臓に限定せず、胆のう、経絡でつながっている目、自律神経までも含めたものを肝と考えます。

気巡り、血量の調整、関節の動きはすべて肝から!

さて、そんな肝の三大機能はこちら。

① 疏泄(そせつ)=全身に気を巡らせる
② 蔵血=血を貯蔵し、血量を調節する
③ 筋=関節の屈伸を支配する

意外かもしれませんが、訳もなくクヨクヨしたり、イライラしやすかったり、抑圧感、怒り、のぼせ、胸が悶々としてスッキリしない、肋骨の脇が腫れて痛む、のどにモノが詰まった感じ(梅核気)、口中の苦味といった症状は、すべて肝に通じるもの。
また、こうした症状を東洋医学では疏泄(そせつ)といい、これが悪化すると、血行や体液が滞り、自律神経が乱れ、気鬱(きうつ)と呼ばれるさまざまな症状となって現れると考えられています。

さらに、肝の蔵血(ぞうけつ)作用も見逃せません。蔵血とは、文字通り血を貯蔵し、血量を調節する働きのこと。夜になると、余分な血液は肝に貯められますが、夜更かしなどで蔵血がきちんと行われないと、血の不足、めまい、筋肉のけいれん、不正出血などの原因となるので要注意。肝をしっかり滋養するためには、夜寝ることも大事なのです。

また、肝は筋に関係し、関節の屈伸にも影響します。肝が弱ることで、四肢のけいれんや麻痺を引き起こすことも…。

山中先生の講義風景
“怒”の感情はマイナス面だけではありません。義憤(ぎふん)という感情は、道義に外れたことに対して憤り、そこから正すべき行動を起こすというメリットもあるんです」という山中先生の話に、参加者も大きくうなずきます。

 

 

肝を滋養し、さらに機能を高めるのが食養生の極意

そこで、こうした春の心身変化を軽やかに乗り切る術(すべ)が食養生。「肝を滋養し、さらに機能を高めるものを一緒に摂ることが基本原則。車だって、アクセルばかり踏み込んでいてはガソリンが減るばかりでしょう。だからガソリンも補充しながら…。これと同じことです」と山中先生。

その原則に基づいた、春の食養生の公式はこちら。

(1=基本) 疏肝解鬱(そかんげうつ=肝機能を高める)食材+柔肝(じゅうかん=肝を滋養する)食材
(2) 基本+理気(りき=気を巡らせる)食材
(3) 基本+安神(あんじん=精神を安定させる)食材

基本は疏肝解鬱で肝機能を高め、柔肝で肝を滋養。さらに加えて、気を巡らせる理気食材で疏肝解鬱を補助し、精神を安定させる安神食材で心を落ち着かせる―――、その組み合わせが春の食養生のポイントです。

では、それぞれの効果に対応する食材をご紹介しましょう。

●疏肝解鬱食材

涼寒性
春菊、つくし、タケノコ、梅花、金銀花
平性
ターサイ、アケビ、松の実、春蘭、サフラン
温熱性
よもぎ、ショウガ、仏手柑、はまなす、ジャスミン、金柑、山椒、八角、グローブ、ウイキョウ、草スグ、草果、砂仁、陳皮

●柔肝(補肝血)食材

セロリ、ゆきざさ、にんじん、くるみ、ごま、きくらげ、サフラン、金針菜、松の実、レイシ、竜眼、桑の実、クコ、ラズベリー、グミ、ぶどう、ナツメ、フカヒレ、いわし、サヨリ、マグロ、浮き袋、カサゴ、オコゼ、フグ、田ウナギ、アワビ、ムール貝、帆立貝、ドブガイ、エビ、上海蟹、甲イカ、ウニ、豚、レバー、豚軟骨、烏骨鶏、すっぽん、ロイヤルゼリー

●理気食材

ザーサイ、レタス、しそ、えごまのは、タイム、オレガノ、バジル、よもぎ、たんぽぽ、わらび、ネギ、らっきょう、エシャロット、くわい、金糸瓜、唐辛子、小豆、くるみ、ひまわりの種、ダッタンソバ、しいたけ、松茸、マッシュルーム、あみがさだけ、菊、バラ、ハマナス、ジャスミン、オレンジ、ザボン、ダイダイ、ユズ、金柑、レモン、仏手柑、李、さんざし、レイシ、桑の実、マンゴー、八角、ウイキョウ、シナモン、カラシ、白ズク、草ズク、肉ズク、砂仁、クミン、木香、うこん、陳皮

●安神食材

春菊、レモングラス、たらの芽、わらび、ウコギ、百合根、さつま芋、山芋、蓮の実、黒豆、緑豆、アーモンド、ヤマブシタケ、もち粟、梅花、ジャスミン、蓮の花、金針菜、グミ、ナツメ、レイシ、竜眼、クコ、パッションフルーツ、アジ、ハタ、ホウボウ、牡蠣、伊勢海老、ハツ

※黄色の網掛けは今回の食養生レシピで使用している食材です。

「食養生を実践していると、自分の体調がわかるようになってきます。症状が悪化しないうちに、それに応じた食材を食べてケアできるんです」と山中先生。この考えは、今後ますます必要とされるセルフメディケーションに欠かせないライフスタイルといえるでしょう。

さて、続くページは実践編。これらの食材を使った、春の食養生レシピをご紹介します!


 

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TEXT 吉谷環
PHOTO 佐藤貴子(ことばデザイン)