CONTENTS(1~11のシリーズ連載になります)

1 日本有数のふかひれ生産地・気仙沼
2 菅原市長が語る「鮫と気仙沼」
3 鮫の水揚げ深夜二時
4 船頭はすごいよ – 延縄漁の男たち
5 大漁そして入札!
6 「鮫のひれ」が「ふかひれ」になるまで
7 真っ黒な鮫のひれが、真っ白に!?
8 干した時間もおいしさの一部!奥深い乾物の世界
9 シェフの手間を肩代わり!戻し済ふかひれ
10 ふかひれだけじゃない!鮫肉も中華に!
11 スープも具もまるごと鮫!驚きの鮫ラーメン誕生

 

ふかひれとは、鮫のひれを乾燥させて作られる食材のこと。その形を保ったまま、ふっくらととろけるように煮込んだふかひれ姿煮や、ひれの繊維1本1本ほぐして作る黄金色のふかひれスープは、中国料理を代表するご馳走です。

ふかひれ姿煮
ふかひれ姿煮
ふかひれスープ
ふかひれスープ

そんな中国名菜となっているふかひれの原料は、実は日本から中国に輸出されてきた歴史あるもの。

特に東北地方、三陸産のふかひれは、干し鮑、干しナマコと並び、江戸幕府が長崎から中国の清朝(1636-1912年)に輸出していた俵物三品のひとつでした。

これらは日中問わず、中国食材店で「乾貨」と呼ばれていますが、それは金銀銅の代わりに決済ができるものだった名残。今も昔もふかひれはとっておきの食材なのです。

ふかひれ
鮫の尾びれを乾燥させた「原ビレ(げんびれ)」と呼ばれるふかひれ。

そこで今回の「食材狩人」でご紹介するのは、鮫のひれがふかひれになるまでの一連の過程と、産地における鮫漁業、そして鮫全体を活用する取り組みについて。取材のはじまりは、宮城県気仙沼市です。

気仙沼(けせんぬま)ってどんな場所?

そもそも気仙沼市界隈は、古くからマグロ延縄(はえなわ)漁業がさかんな場所。そこがなぜふかひれの有数の産地に?というと、延縄漁業では、マグロ以上に鮫が多くかかることから。その結果、気仙沼は日本有数の鮫の水揚げ地となっていきました。

気仙沼駅
気仙沼駅にある鮫と灯台のモニュメント。

また、鮫の力強い泳ぎを支える堅いヒレを、食用に加工する技術が発達したのもここ気仙沼。しっかりとしたひれを、人間が食べられるくらい柔らかな食材にするためには、鮫皮や軟骨を取り除き、乾燥しては水で戻し…と、大変な手間がかかりますが、その技術が継承されたことで、現代に事業として花開いた歴史があります。

つまり、産地に新鮮な食材があり、高い加工技術が現代まで受け継がれているのが気仙沼。そこでまずは、気仙沼のふかひれを支えてきた「鮫と街の関わり」について、気仙沼市長にお話をうかがうことにしました。

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構成・文   佐藤貴子(ことばデザイン)
気仙沼の撮影 菅野勝男(LiVE ONE)