当コーナーは「中華好きを増やす」というミッションのもとに集まった、同士たちのトークセッション。中華を愛し、中華に一家言あるメンバーが、円卓と料理を囲んで、熱く語り尽くします。

※このシリーズは、3月8日に新橋亭新館にて行われた座談会「第1回 中華好き人口を増やす会」の模様をお届けします。


2012/7/17up

[番外編2](いわゆる)げてもの料理談義

四つ足は机以外何でも食べるーー。嘘か本当かわかりませんが、中国(主に広東エリア)の食文化の一側面を表している有名なフレーズですね。

しかしまさか、それは食べないだろう…というものでも、あるらしいんです。当座談会でも、メンバーがメンバーですから、もれなく話題になりました。今回は、本論からは脱線した番外編としてご紹介いたします。

※話はだんだんエスカレートします。げてもの嫌いな方は気分を害される可能性がありますので、読み進める際にはご注意ください。


ちょっと変わった肉もいい

田中 肉料理っていうと牛豚鶏ですが、私個人としては、肉料理の肉を変えていくっていうのもありだと思うんですよ。牛や豚でやっていた料理を、鹿肉や羊、ダチョウにするとか。

――ダチョウはけっこうさっぱりしてますよね。中華の羊は、クミンが効いたような、スパイシーな串焼きとして定着しつつあるかと。

田中 うちの店では鹿肉が選ばれ始めていますよ。

―― 鹿というとフレンチ、ジビエのイメージがありますが。

南條 エゾジカもうまいです。

田中 それに今、そんなに価格が高くないんですよ。

―― ところで食用の鹿っていうのは、どういうところで仕留めるんですか。

田中 もうね、飼育されてます。ダチョウもね。

南條 丹波篠山の鹿もいいかもしれません。


「丹波篠山」を大きな地図で見る

―― 中でもどこらへんの鹿がおいしいんでしょうね。

田中 飼育されてるのは、奈良だったりしますけど(笑)。

――えっ、まさか、あそこの。

福島 えっ、食用に飼ってるんですか?あれは…。

―― 公園内に増えすぎた鹿を…。

田中 いや、間引きとは言わないですけど。実際のところは北海道産がいちばん多いんじゃないかな。

古川 エゾシカはそうですね。

―― そういえば、農作物の鳥獣被害で、猿と鹿による被害は多いと聞きますね。

南條竹則氏
南條竹則氏

南條 肉といえば猿を食ったけど、うまいですな。

―― やっぱり脳ミソとか食べるんですか。

南條 脳ミソではなく、手や足の肉なんですがね。青椒肉絲(チンジャオロウスー)の調理法で。ハンターが獲ったものでしたよ。ブキブキしてて、軽くて。

―― 筋肉質?

南條 筋肉質で、ほんと軽くて、歯ごたえがしこしこして、すごくうまい。

田中 僕は、猿の肉は食べてないんですけど、猿の脳ミソはやったことがあります。

南條 本当ですか?


『ハンニバル』か?『インディージョーンズ』か?

田中 あれは昭和30年代のことです。16人の宴会で、あの当時で一人8万円くらいでした。けっこうな有名人がいましたね。

まずは最初、猿に輪っかをするんですよ。台に載せて、猿は捕まってるんです。で、「まず、この猿を料理させていただきます」って言って、テーブルの前に出すんです。

すると、猿がキョロキョロキョロキョロ見るんですよ。で、(猿を)下げる。そこから厨房に戻って、毛を剃るわけです。全部つるつるに。

―― 生きてるんですね。

田中 生きてます。で、毛をキレイに剃ったらもう一回お客さんの前に出すの。それをまた下げる。でね、人間の脳も一緒だって言うんですけど、ここの後ろと、こことね、3カ所(頭の3カ所)をポンとやると、キレイにぴゅーっと…。

―― まるで映画の世界。

古川 ああ、頭蓋骨に…。

田中 きれいに線が入って、ポンと取れる。それから、全部血を流す。

髙橋 まだ、生きてるんですよね。

田中 うん、生きてる。で、上の方の骨をスッと開いたら、中の脳ミソを取り出して、(頭蓋骨の)中を全部洗うんですよ。脳ミソもサッと軽く水洗いして。

それを見ると、脳には血管が通ってるんだよね。それをピンセットでチュッチュッチュッチュと全部取って。その下処理を終えたら、ボイルしたミソを(頭蓋骨に)入れ、もういちど猿に目隠しして、お客様の前へ出すんです。切り取った頭の部分を上からかぶせて、ちょうどフタのように乗せて。

で、それをお客様の前でパッと取る。すると中には白く、血管は取ってあり、そこにはきれいに掃除した脳ミソが…!

―― 供される時のディスプレイとしても、猿の体の方もついてくるんですか。

田中 ついてくる。

南條 加熱するんですか。

田中料理長
新橋亭 田中料理長

田中 やっぱりね、加熱しました。だから少し固まりますよ。その後、食べる分を取り分けるんですが、その時は七輪みたいなやつに(皿を置いて)入れて、細かく切ってお客さんに出しました。

だいたい1人1~2切れぐらいかな。面白いのはね、ポン酢で食べるんですよ。レモンと、生姜と、それから日本でいうなんだろうあれは…。

南條 橙(だいだい)みたいな。

田中 なんていうのかなあ、香りのいい柚子みたいな柑橘を絞るんだ。

―― で、味の方は・・・。

田中 ひと言でいうと、白子ですな。

一同 ああ~。

髙橋 あんなになめらかな感じなんですか。

田中 私自身は食べてないんです。でも16人中、食べた人は6人しかいなかった。

―― 他の人が食べなかった理由は…?

田中 たしかね、気持ち悪くなっちゃったんだね。

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Text 佐藤貴子(ことばデザイン)
人物撮影 林正