まるで食べられる風船! 光も透けるほど薄く軽く、口にするとほのかに甘くクリスピー。チュイルのように細かい網目状の生地をぱりぱり食べる、そのお菓子は「煎堆皇(チントイウォン)」。

これは唐代に起源を持つとされる中国の伝統菓子で、香港や広東省では春節にも登場するもの。材料はもち米の粉、砂糖、水、油といたってシンプル。

加熱しながら生地を練り上げ、半日間寝かせた後、油の中でコロコロと回し長らく生地を膨らませ、しっかりと生地が固まったらできあがりです。

インパクトのあるビジュアルに、思わず写真を撮りたくなること必至!「海鮮名菜 香宮」の篠原裕幸シェフに、その作り方を教わりました。

※篠原裕幸シェフは、現在「ShinoiS(シノワ)」のオーナーシェフとなっています。

【動画で紹介】技のタマモノ!煎堆皇(チントイウォン)の作り方(4分38秒)

※実際の制作時間は、生地づくりに約5分、生地を寝かせるのに約半日、揚げるのに17分ほどかかっています。
※生地の揚げ方をご紹介する映像は1分12秒~です。
※揚げるシーンは、揚げ時間に対して生地がどんな状態になっているか、適宜早送りしつつご紹介しています。揚げ手によって、揚げ時間は変わってきますのでご留意ください。

煎堆皇(チントイウォン)調理工程徹底解説!

上の動画でご紹介した内容を、写真とテキストで詳細に解説します。動画ではわからない調理のポイントはこちらでご確認ください。

煎堆皇(チントイウォン)の材料
材料:もち米粉…600g
水…600cc
グラニュー糖…200g
白絞油…適量

(1)から焼きした中華鍋に分量の水を入れて熱し、グラニュー糖を加えてしっかり溶かします。


(2)もち米粉を一気に加えます。

(3)麺棒で手早く混ぜ、水分を米粉全体にいきわたらせます。この時、強火で火を当て続けると焦げてしまうので注意しましょう。


(4)生地がまとまったら、キッチンエイドのボウルに入れ、アームをセットして中速で回します。

キッチンエイドがない場合は、フードプロセッサのパン練り機能を使用しても。その際、容量に合わせて生地の分量を調整してください。

(5)生地が滑らかになり、つきたての餅のように柔らかく、伸びがよくなったら練り上がりです。

(6)ボウルへ油を適量入れ、生地ひとまとめにし、ラップをして約半日ほど寝かせます。

生地の乾燥とボウルへの粘着を防ぐだけでなく、全体がなじみ、生地の伸びがよくなります。


(7)滑らかで柔らかな質感に戻すため、固くなった生地を手で練り直します。

その際、生地についたオイルを適量混ぜ込むとやりやすいです。パンや餃子の皮のように、台を使って練る必要はありません。撮影時の練り時間は約1分ほどです。


[揚げ調理]

(8)約200gの生地を丸め、180℃に熱した油の中に、鍋肌から滑らせるようにして入れます。
※ここでは直径42cmの広東鍋を使用しています。

(9)フライ返しと菜箸で、生地を回しながら、やさしくまんべんなく油をかけていきます。

(10)生地が溜まってくる場所を回転させながら揚げます。

生地が膨らんでくると同時に、生地が徐々に溜まってくる場所ができます。同じ方向にばかり回すと、楕円形になってしまうので注意しましょう。

また、揚げている過程で穴が空いてしまった場合、穴から湯気が出てきます。その場合は、そこ目がけて溜まった生地が落ちていくように回転させ、穴をふさぐようにします。


(11)表面が硬く、叩くと「コンコン」という程度に固まるまでしっかり揚げます。

膨らんだ後も、油の温度は一定に保って硬くなるまで揚げ続けます。揚げ方が足りないと、盛り付けた後にすぐしぼんでしまいます。

簡単そうに見えて、まんまるに揚げるのは意外と難しい煎堆皇(チントイウォン)。

実は以前80Cで企画した「順徳料理を食べる会@香宮」で、多くの参加者が「最も印象に残った料理」として最も多くの票を集めたのがこちらの料理でした。直径20cmほどのまん丸い料理が出てきたら、誰だって目を奪われますよね。

サイトに掲載して以来、「レシピを教えて!」との問い合わせが篠原シェフ宛に数えきれないほど来たことから、このたび80C(ハオチー)で作り方を公開していただけることになりました。

素朴ながら華やかさもあり、食卓に出したら皆の注目を集められる一品。集いの食卓にぜひ「食べられる風船」をおひとつ、いかがでしょう。


料理制作 篠原裕幸
Movie & Photo 森山良雄
Text 佐藤貴子